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​『奇怪を絵に描いたような相互関係

「バロウ……」
慣れ親しんだ名を呼びながら、これまた慣れ親しんだ機械に目をやると”あってはならない光景”と瞳を合わせた
「ズ……」
その光景はこちらを見つめ返すだけで返事をしない。当たり前だ、「バロウズ」はそれの名前ではない。それにはそれの、相応の名前があった。
これ以上ないほどの沈黙がこの場を支配する。痺れを切らしたようにそれは、ゆっくりと口を開いた。
「やあ」
「─────!!!!」
今しがた『慣れ親しんだ』と形容し、一種の深い愛情を持って掲げた機械を、今にも握り潰してしまわんばかりにフリンは右手で掴む。
引き抜け!今すぐにーーー力を入れ直した瞬間、冷ややかな声がまさに水を差した。
「外せないよ」
「なっ、呪いの装備かッ───!!!」
冗談ではない、そんな25年前の東京にあった”ゲーム”じゃあるまいし(ちなみにこの知識はナナシから教えてもらった)。
あってたまるかこんなこと。しかしてそれは”ある”のだった。外れない、見事に、笑えるくらいに。
疲弊しきった顔で恐る恐るガントレットを掴んでいた右手を外すと、否応なく現実と対峙した。フリンにとってはできれば二度と向き合いたくない現実と。
それは────クリシュナは、そんなフリンを見ては堪らなく愉快そうに笑った。
「そんなに驚いてもらえたなら、こっちもサプライズのしがいがあったものだね」
「お前、なんで……ッ、お前は僕が」
封印したはず、なのに。
東京と東のミカド国、双方の復旧の中でもフリンは常に神田の社にある井戸の封印へ気を配っていた。やれナナシやアサヒがオーディンに唆されて封印を解いたことが原因であれ、あの時は確かに自身の弱みに付け込まれてしまったという事実が彼を追い立てていた。
だからこそマサカド公が封印を守護すると語ってくれた今でも、妙な責任感を持って行動している。もっとも、自分が拉致されてから救出に至るまでの紆余曲折でそれはもう苦労したであろうイザボーからの反応は見事に芳しくないが。

「もちろん君たちのご活躍でボクは退屈極まりない籠の鳥に逆戻り、それは変わっていないから安心してくれていいよ」
「……そんなこと言われて『はいそうですか』って、なると思ってないだろ」
「そうだね。ただこればっかりは本当だから、これ以上でもこれ以下でもないんだが、どうしたら君に信じてもらえるかな?」
「…ッ頼むから何もしてくれるな!!」
慌てたとはいえ不本意ながら懇願するような形になってしまった。クリシュナはこちらを流し見つつ「君がそこまで言うなら…」と口の端を上げた。嗚呼まずい…これは対応に失敗した。完全に。

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